労働審判を申し立てられた|流れや答弁書の作成方法について解説
労働審判とは、労働者と事業者との間に生じた民事紛争について、裁判官及び労働関係に関する専門的な知識経験を有する者で構成する審判委員会が、事件を審理したうえで、調停を成立させるか、解決のため必要な審判を行うという手続です。
労働者から労働審判の申し立てがあった場合、会社側はどう対応したらいいのでしょうか。
今回は、労働審判を申し立てられた場合の流れや答弁書の作成方法について、詳しく解説していきます。
労働審判の対象
労働審判の対象となるのは、個々の労働者と事業者との間に生じた民事紛争です。給与や残業代など賃金不払い、不当解雇、雇止め、セクハラ・パワハラ、労災など、労働者と会社との間に発生する様々な民事紛争が対象になります。
特に、従来、時間とコストがかかるために裁判を提起できなかった事件について、労働審判がその受け皿となることが想定されています。
労働審判の流れ
労働審判の流れは次の通りです。
- 一方当事者(一般的には労働者)からの申し立て
- 裁判所が第1回期日(原則として申立の日から40日以内)の指定をし、呼び出し状が相手方(一般的には事業者)に送付される
- 相手方(事業者)が答弁書や証拠書類を提出
- 第1回期日に双方が出頭し、審理を行う
3回以内の期日において審理を終結するものとされています。
その間に申立人と会社側との間で合意が成立すれば調停成立となり、手続は終わります。
しかし、調停がまとまらない場合は審判が申し渡されます。
答弁書の作成方法と注意点
答弁書は、労働審判の申立てに反論するための書類です。
労働者から申立てがあった場合、使用者側が作成することになります。
答弁書に記載する内容
答弁書に記載する内容は次の通りです。
- 申立て内容の事実に対する認否
- 申立書の内容に対する反論
- 反論の裏付けとなる具体的な事実
- 予想される争点と当該争点に関連する重要な事実
- 予想される争点ごとの証拠
- 労働者と会社側で行われた交渉や、その他申立てに至るまでの経緯
裁判所から郵送される呼出状には、申立書と一緒に答弁書の記載例も同封されているので、記載例を参考に作成することができます。
提出期限が短い
労働審判では、原則として申立てから40日以内に第1回目の期日が指定され、書類提出はその1週間前までとなります。いったん期日が指定されると、通常変更は認められません。一般の民事裁判に比べて準備の期間が極めて限られます。さらに、答弁書での主張を裏付ける資料類の収集はそれに先だって行わなければなりません。タイムカードや出勤簿、帳簿類といった分量の多い資料の準備、他の従業員や事業場の責任者からの事情の聴取やその書面化、といった作業を、この限られた時間の中で行う必要があります。
答弁書の内容で全てが決まる
労働審判は最大でも期日は3回です。そのうえ、多くの事件では1回目の期日で調停による解決に向けた当事者の意向の確認が行われます。つまり、労働審判委員会は第1回目の期日で提出された双方の主張・立証をみたうえで、解決の方針を示すことになります。したがって、労働審判は第1回期日が勝負と言われます。
答弁書は、まさにその第1回期日に向けて使用者側が提出する主張ですから、考え得るあらゆる主張を展開し、かつ、それを裏付ける資料をできる限り収集して提出する必要があります。
通常の裁判では、第1回期日に間に合わなかった主張について、後日主張する、といった方法がありますが、労働審判では基本的に後日主張する、といった方法が使えません。
まとめ
労働審判を申し立てられたら、最大でも3週間程度で資料を収集し、事情を知る他の従業員や責任者などから聴取を行った上で、おおむね4週間程度で答弁書を作成する必要があります。使用者側にとっては時間的に極めて厳しい手続で、よく分からずにまごまごしているうちに、ろくに準備できないまま期日を迎えてしまうということにもなりかねません。
労働審判を申し立てられたら、迷わずすぐに弁護士に相談されることをお勧めします。
なお、期日が変更できないことから、指定された第1回期日にその弁護士が出席できない場合には、その弁護士に依頼を断られることも考えられます。その場合は、さらに次の弁護士を探さなければなりません。ですので、弁護士への連絡は一刻も早く行うべきです。
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